データから「日本のゲーマーはすぐ悪評をつける」を検証する
概説
『よく言われる「日本人のゲーマーはすぐ悪評をつけるし、市場規模も小さいので海外から無視されることが多い」という論説は果たして本当なのかどうか?』という記事が話題ですね。
note.com
記事中で「Death Stranding」の不評レビューの割合が算出されていましたが、その1本のデータだけでしたので、
ではということで手持ちのSteamゲーム20本について全体と日本語でのレビュー好評率を比較してみました。
(ギョームをサボっておよそ2時間でデータ抽出からこの記事の執筆までしています)
結果として、一般的に、日本語レビューでの好評率は全体での好評率に比べて数パーセント低いということが明らかになりました。(理由も想像がつきますが、後述します。)
しかし、全体レビュー数に比べて日本語レビューの占める割合は小さいので、数パーセント程度の差というのは全体に与える影響としては無視できるものだと思われます。
一方で、日本製のゲームでは日本語レビューでの好評率が顕著に低いものが見られました。
これも原因は想像がつき、メーカー側に非があるのでは?と思うものもあるものの、過去にこの事象に直面した日本のゲームメーカーの間で「日本人はすぐ悪評をつける」というイメージが残っていてもおかしくはないでしょう。
データ
集計期間は2021/06/15 の10時~12時ごろです。
C列が「全体のレビュー数に占める『好評』の割合」
E列が「日本語のレビュー数に占める『好評』の割合」 で、
F列が E / C 、つまりF列の数値が低いほど「全体に対して日本人は悪評をつけがち」となります。
※「NKODICE」にて、日本語レビュー数が全体レビュー数より多い、という不可思議な事象が発生していました。
おそらく、言語別のレビュー数と全体レビュー数との集計タイミングに差があるのではないかと思われます。
検証には影響がないと判断したためそのままにしています。
スプレッドシートはこちら:https://docs.google.com/spreadsheets/d/18HnMOXjdpbK0_OiYMkmZQ0w4ojxWXr_QhPg5CuwOzI4/edit?usp=sharing
手法
自身のSteamライブラリから、以下の20タイトルを抽出し、検証対象としました。
- プレイ時間の長い10本
- 最近発売された5本
- 日本製のゲームでプレイ時間の長い5本 (上15本ではあまりにも洋ゲーに偏ったため)
「好評率」は各ゲームのストアページにて、評価概要にマウスオーバーした際表示されるパーセンテージを写しています。
(「あなたの言語」でフィルターをかけたうえでもパーセンテージ表示可能です。)
また、参考情報として、発売日、日本メーカーか?、インディーズゲームか?、公式で日本語対応されているか?も記載しています。
ただし、発売日についてはアーリーアクセスを実施していたタイトルではズレていたり、
日本語対応についても発売時は未対応で最近アップデートで対応されたものなども多いため、あくまで参考です。
考察
日本製か海外製かを問わず、日本語の好評率が全体の好評率を上回ることは稀有であるという結果から、一般に「日本語レビューでの好評率は全体に比べて数パーセント低い」と言ってよいと考えられます。
しかし、この結果をもって「日本人はすぐ悪評をつける」が立証されるというわけではありません。
元記事にも書かれていますし今回のデータにも載せていますが、日本語のレビューが占める割合というのは全体の1%程度に過ぎません。
1%において全体より僅かに低い評価がつけられたところで、全体の評価に与える影響は微々たるもので、それをもって海外から無視される要因であるとみなすのは難しいと思われます。
なお、海外製のゲームにおいては、好評率が数パーセント低いというのは言語の壁がある以上仕方がない事象かと思われます。
公式で日本語対応するにしても英語のままプレイするにしても、ゲーム体験という点ではネイティブのプレイヤーにどうしても一歩劣りますので。
一方で、日本製のゲームでは例えば「信長の野望・創造 戦国立志伝」で日本語好評 / 全体好評が46%、「スーパーロボット大戦V」で同76%と、
日本語レビューでの好評率が顕著に低いものが見られます。
古い日本のゲームに限った話かもしれませんが、今回のデータからはなんともいえません。
これらが低い原因については確かなことは言えませんが、レビューをざっと眺めた印象では、
コンシューマからの移植が雑で操作性に難があったり (海外プレイヤーはコンシューマ版を知らないので比較して低評価、としづらい)、
過去作との差別化に失敗していたり (海外プレイヤーは過去作を知らないので高評価になる)
という理由ではないかなと思われます。
概説にも書きましたが、これをもってメーカーの中で「日本人はすぐ悪評をつける」というイメージを持っていてもそれはそれでおかしくないだろうな、と感じます。
また、本筋とはズレるのですが、検証対象のほとんどが公式で日本語に対応していてちょっとびっくりしました。
(パラドさんも頼みますよひとりだけ遅れてますよ貴方とこの非公式日本語化燃えやすいんですよパラドさん頼みますよ)
これもまた「海外から無視されることが多い」に対する反例かな、と思いますw